あのんの辞典

 

 

「た」

 

 

【第一原理】(だいいちげんり)名詞 たぶん人の多くは第一原理を求める旅に出発することなしに人生を終える。さらにゲーデルという人が難しいことを証明してしまったために、自らの選択で出発しなかったことを装いたがる連中は、われわれ自身が含まれるこの体系内では発見できないからねとしたり顔でその証明を出発しなかった言い訳にする。この「第一原理」を「任意のあるもの」と置き換えて考え始めるというのはどうかなあ。すぐに筋道は合流するんだけどなあ。諸君、出発しない言い訳を準備する必要はない。当辞典を読むことがすでに旅の道程に己の身を置いているということだからね。

(自然科学における第一原理じゃなくて形而上学における第一原理のことであります)

 

【大学】(だいがく)名詞 優秀な学生にとっては勉強の仕方を学ぶところ。それ以外の学生にとっては遊び倒したり、遊び倒せない自分に不満をいだく場所。(→注釈

 

【体系】(たいけい)名詞 16歳のとき「体系は選んでもしかたない」と気づいた。つまり、「体系とは表現型だったんだ」と。正誤・優劣・好悪などの価値判断や嗜好をついまじえてしまう選択という行為はしかたないとしても、いずれにせよ体系を選ぶということは「表現型のいずれかに対する選択にしかすぎない」。めんどうな思索から離れて三年、馬鹿騒ぎで日常を送っていたわたしであったが、突然こんなことに気づくんだからもしかしてわたしは馬鹿ではなかったのかと思ったりして。しかしまた、これは当たり前なんだからもっと早く気づいてもよかったなあ、とも。

 

【対症療法】(たいしょうりょうほう)名詞 根本的な解決が望ましいが、往々にしてそもそも根本的な解が存在しないことがあるので、この対応は事実上多くの場合有効である。ま、人生とはそんなものである。

 

【大切】(たいせつ)名詞 少なくとも他人を大切にするのと同じぐらいに自分を大切にしていたら、わたしはこんなにも不幸になっていなかっただろう。

 

【代替物】(だいたいぶつ)名詞 本来の事物と同様の効果や結果があったり期待されたりするもの。本来の事物に依存することが間違えている場合、代替物に依存することも間違いであることに気づかない馬鹿も多い。

 

【大地】(だいち)名詞 しっかりとした基礎の比喩として遣われるが、人に自分自身が落下し続けていることを悟らせないためにあらかじめ準備されたものであることに気づく人は少ない。

 

【対比】(たいひ)名詞 日本から金を盗むことしかしない国と、日本と友好的につきあっていこうとしている国があれば、日本人はどちらの国を好きになるだろうか。日本を近隣諸国へ売り渡そうとしている連中と、日本の自主独立を願っている人たちがいれば、日本人はどちらを支持するだろうか。

 

【対立軸】(たいりつじく)名詞 なにかを主張するときにまず「対立軸」を嬉々として持ちだす輩は、躊躇なくうさんくさい奴と判断してさしつかえない。小は人の陰口から大は大量虐殺まで、諸君の経験と人類の歴史がこの判断を補強してくれる。

 

【宝くじ】(たからくじ)名詞 算数や数学がでるできないにかかわらず、主に貧しい人たちが自ら好んで払う税金。これは払っても払わなくてもいいというきわめて珍しい種類の税金である。まわりまわって社会の役に立つのなら、この税を納めないことにしているわたしは少し喜んでいる。(→注釈

 

【タカラヅカ】(たからづか)名詞 宝塚音楽学校へ入った同級生がいた。まじめで努力家で朗らかな心やさしい人であった。音楽学校へ入ったということをその直後にたまたま知って、あの習い事の過密さはそのためだったのかと気づいた。透明な下敷きに彼女の一週間の予定表が挟み込まれていて、教室でおしゃべりをしているときにそれをわたしが見て、たいへんたくさん習い事をしているんですねと聞くと、微笑みながら「はい、がんばっています」と答えた。彼女が宝塚を受けるつもりだとは知らなかった。わたしはその方面に興味がなかったので彼女のことは忘れていたが、先日たまたま思い出して調べてみた。初めて芸名を知った。検索するといろいろと多くのことがでてきた。へえ。歌劇団で男役としてそれなりにかなりやっていたらしい。わたしの知っていた少女の彼女は「かわいい女の子」だったんだけどねえ。(ネットに最近の顔が出ておる。うむ。年齢のわりにとてつもなく美人であるな)(→注釈

 

【たかり体質】(たかりたいしつ)名詞 被害に補償が出ることを知って、補償のために被害を創造するくせのついた人や組織や民族や国の性質のこと。自分の利益にさえなれば人を殺しても平気な人や組織や民族や国が持つ。(→いいがかり体質

 

 【妥協】(だきょう)名詞 対立者と妥協点を見いだしたければ、まず最初に、自己の利益を目的として行動しているということを互いに認め合う必要がある。そうすれば手を携え協力して対立者と問題の解決へ歩み始めることができる。これがわからない者は、要求はできたとしても交渉はできない。

 

【他言無用】(たごんむよう)名詞 立場上知っておかなくてはならない場合や、知っておいたほうがよい場合をのぞき、価値のない愚かな好奇心のために値段のつけることのできない矜恃を支払うことになる他言無用の前置きのついている話は聞いてはいけない。

 

【多数決】(たすうけつ)名詞 意思決定の方法の一つ。多数の人々の意思が反映され、民主主義国家で用いられている。多数決を用いない意思決定の方法としては反対者の一方的弾圧や殺戮などがある。これらは主に社会主義国家や共産主義国家で用いられている。また、多数決という手段を用いてはいるものの、反対意見を表明すると翌日にはその者が行方不明になるような国もある。

 

【正しい】(ただしい)形容詞 自分の主張する意見のみに使用される形容詞。議論が始まると排反事象であっても同時に双方が正しくなって、聞いているほうはわけがわからなくなる。

 

【妥当性】(だとうせい)名詞 厳密性や確実性を追究して限界に達したときに振り返るとぼんやりと佇んでいるのを発見してしまう旧知の概念。それに関して人から文句を言われたり言われなかったりする度数によって導かれる値のこと。

 

【楽しむ】(たのしむ)動詞 わざわざ人にばかにされるためにそれを見せつけている、と思われない程度のふるまいでそれを楽しむのであれば、誰からもばかにされずにすむ。

 

【煙草はその一本ではすまない、酒はその一杯ではすまない】(たばこはそのいっぽんではすまない、さけはそのいっぱいではすまない)自戒語 もし、わたしがその場はその一本でやめることのできる者であったなら、その夜はその一杯でやめることができる者であったなら、いまでも煙草をのみ、酒をのんでいたろう。しかし、煙草はその一本ではすまない、酒はその一杯ではすまない。わたしが煙草をやめ、酒をやめた所以である。

 

【騙す】(だます)動詞 「馬鹿はだまされたがっている」や「馬鹿はだまされることが好きだ」を言い訳として馬鹿をだまして利益を得ようとする者たちがいる。典型的な願望の根拠へのすり替えである。上記の言葉は直接その者たちの口から出ることはないが、その者たちが今までになにをしてきたか、今なにをしているかを観察することでその者たちの本性を見極めることができる。一般に願望が動機であっても差し支えないが、その願望があたかも根拠としての事実であると主張する輩どもは速やかに排除するべきであろう。

 

【多様性】(たようせい)名詞 多様性の第一義はリスクの分散である。すなわち、当該環境に合致しない個体群は結果的に排除される。環境に合致した個体群は生き延びて進化の可能性を大きく持つことになるが、それは必然的な脱落的淘汰という犠牲の中から成長した新芽である。新芽にだけ注目して朽ち果てた死骸を無視すると馬鹿だと言われるますよ。

(また、一方的に多様性を主張することは、多様性そのものに反対する意見も同じぐらいに尊重しなければいけないという自己言及の矛盾を導く。これは反対意見の存在を認めるという程度ではなく、反対意見の存在によって自己存在が否定されることを尊重しなければならないという論理的矛盾である。大部分が低能であるような「多様性主張者」は「多様性という概念には自己否定を内包している」ことに気づかずに叫び続けている)

 

【断言】(だんげん)名詞 ある言説のなかに断言があれば、その断言がどのような前提や条件下であるかを説明してもらうとよい。そしてその前提や条件がなにに基づいているかを次に質問する。そこからさらに質問を続けて対象概念を何段階か遡ることによってその言説を述べた者は単に馬鹿にしかすぎないことがわかる。つまりね、質問を遡っていくと答えることが不可能な領域に入るんだけど、なぜそれが不可能であるかを丁寧に理性的に説明ができるような賢い人はそういるもんじゃないんだね。ほぼ大部分の人はその不可能領域まで思索したことがない。もしそれを説明できるほどの賢い人に出会ったらなにがなんでも弟子にしてもらいましょう。

 

【男女】(だんじょ)名詞 男は人と人との間の社会的関係を維持すべき信義的義務の構造として捉える傾向があり、女は選択可能な権利の行使と見がちである。男は自分の秘密より他人の秘密を守り、女は他人の秘密より自分の秘密を守る。男女間で問題が起こらないはずがない。

 

【誕生】(たんじょう)名詞 もし生まれるときに子が親を選べたとしたら、自分は自分の子に選ばれる親だろうか、とすべての親が考えることができればこの世はもっと住みやすい世界になっていただろう。河童の世界をうらやましく感じる者は、選ばせてもらえなかった子なのか、選ばせることができなかった親なのか。

 

【誕生日】(たんじょうび)名詞 産んでくれた母親に感謝をする日。産むことになった原因の当事者の一人である父親についての扱いはそれぞれ各個人の自由にすればいい。なお、この日は「自分が祝ってもらえる日」と勘違いしている低能もいる。

 

【男尊女卑】(だんそんじょひ)名詞 性別による特性で能力を発揮する時や場所や場合が明確にわかれていたという歴史的な経緯は存在したものの、それを尊卑の見地から捉える考え方は愚かであると言わざるを得ない。報酬はその成果に見合う割合で与えられ、権利には義務が常に付随し、社会はそのやり方で時の船に乗っていた。決してどちらかが尊く、どちらかが卑しかったわけではなかった。ただこのような言葉を遣う連中だけが卑しかったにすぎない。現在では、被害妄想型性差別主義者を病理学的に対象化する場合でないかぎり、とりたててこの言葉を問題視する必要がないことは広く理解されていることと思う。